熊本県の伝統工芸品にも指定されている来民(くたみ)うちわです。一般的なうちわの形ですが、柄が細長いのが特徴です。丈夫に張られた和紙がしっかりと風を仰いでくれます。
和紙に柿から採った柿渋を団扇表面に塗ることで、丈夫に保つだけでなく、柿渋に含まれるタンニンの働きで虫除けにもなり、年々色合いが濃くなりその変化も楽しめます。
職人により、1本1本ていねいに和紙を貼り、いくつかの工程を経て仕上げられる柿渋和紙は、月日を重ね、だんだんと味わい深い色合いになります。乱暴に使わなければ100年以上もつといわれ、まさに一生もの。
長寿を誇り、虫が付かないことから、来民の渋うちわは縁起物として喜ばれているのだとか。その他にも、生まれた子どもの名前を入れた「命名うちわ」や年祝いの記念に配る「還暦うちわ」「喜寿うちわ」など贈りものとしても多く利用されています。
国産の自然素材をすべて手作業で仕上げ、年月と共に色合いが深みを増す独特の色彩美が注目される来民うちわは、味わい深い日用品の一つとして、夏が来ると思い出してもらえる贈りものになりそうです。